グルタチオン
グルタチオンフィルム、吸収率から副作用まで疑問を総まとめ
※本内容は特定の商品に直接関するものではなく、成分に関する健康情報です。
グルタチオン ファクトチェック
1.グルタチオンフィルムは吸収率が高くない?
2.グルタチオンを飲んでも効果がない?
3.グルタチオンは副作用が出ることがある?
こんにちは。薬剤師Jinnyです。
最近、最も多くの方に求められている栄養素といえば、間違いなくグルタチオンではないでしょうか。私もこれまでに何度か、研究とともにご紹介してきた成分です。特に近年は、口腔粘膜から吸収させるフィルム型のグルタチオン製品が人気を集めているようです。
それに伴い、フィルム型についての疑問も増えてきました。私自身もよく、フィルム型は従来の経口摂取と比べて吸収率に差があるのか、グルタチオンは経口摂取では効果がないという話は本当なのか、あるいは摂取時に副作用が起こる可能性があるのか、といった質問をいただきます。そこで今回は、さまざまな研究結果をもとに、特によく寄せられる質問を整理してみたいと思います。
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グルタチオンフィルムは、経口摂取と吸収率に差がない?
グルタチオンは経口摂取すると吸収率が低く、胃腸を通過する際に体内の酵素によって速やかに分解されてしまいます[1]。そのため、いわゆる「白玉注射」と呼ばれるグルタチオンの静脈注射を検討する方もいますが、注射を受けることによる心理的負担や、経済的・時間的コストなどから、日常的なケア方法としては難しいという声も多いです。
そのため、学術界ではより負担なくグルタチオンを補給しつつ、吸収率を高める方法が研究されてきました。その一つが「口腔溶解フィルム」です。口腔溶解フィルムは有効成分を口腔粘膜から吸収させるため、成分が胃を経由せずに直接循環系に入り、消化過程での損失を抑えることができます。
実際、2022年に国際学術誌 Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology に掲載されたレビュー論文では、一般的な経口製剤では投与量の10%未満しか血中に到達しない一方で、口腔溶解フィルム形態では投与量の80%以上が全身循環に吸収されると報告されています。まとめると、フィルム型グルタチオンは経口摂取よりも吸収率が高いということです[2]。
「これまでの議論のとおり、グルタチオンは口腔経路を通して速やかに吸収され、治療効果を発揮するのに十分な高い濃度に血液中で到達する。胃腸からの吸収と口腔からの吸収を比較した研究では、グルタチオンが直接循環系に入り、迅速かつ高い濃度に到達するという点で、後者の方がはるかに優れていることが証明された。」
[1] Giustarini, D., Milzani, A., Dalle-Donne, I., & Rossi, R. (2023). How to Increase Cellular Glutathione. Antioxidants (Basel, Switzerland), 12(5), 1094. https://doi.org/10.3390/antiox12051094
[2] Sharma, D. K., & Sharma, P. (2022). Augmented Glutathione Absorption from Oral Mucosa and its Effect on Skin Pigmentation: A Clinical Review. Clinical, cosmetic and investigational dermatology, 15, 1853–1862. https://doi.org/10.2147/CCID.S378470
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グルタチオンは、飲んでも効果がない?
韓国の食品医薬品安全処では、グルタチオンは健康機能食品の機能性原料として認められていないため、摂取効果について議論が存在します。一部ではこれを理由に「グルタチオン無用論」を唱える人もいます。
しかし、グルタチオンは実際の医療現場で薬物中毒の治療や肝機能改善のための医薬品として使用されている成分です。医薬品とは、予防あるいは治療を目的として用いられるものですから、グルタチオン投与が効果がないというのは全く筋の通らない話です。さらに、世界的に権威ある学術誌でも、適切な用量と摂取方法でグルタチオンを摂取すれば十分な利点が得られることを示す人体試験の結果が継続的に発表されています。
2015年、SCI級国際学術誌『European Journal of Nutrition』に、グルタチオン経口摂取の効果を多角的に検討した人体試験が掲載されました。この研究では、成人54名に6か月間、毎日250mgまたは1,000mgのグルタチオンを経口摂取させたところ、体内のグルタチオン濃度が上昇し、酸化ストレスが減少することが確認されました[3]。
また2017年には、SCI級国際学術誌『BMC Gastroenterology』に発表された人体試験で、非アルコール性脂肪肝患者29名に約4か月間、毎日300mgのグルタチオンを経口投与した結果、肝機能数値が有意に改善したと報告されています。
「私たちの研究結果によると、グルタチオンの経口摂取は肝臓の代謝を助け、非アルコール性脂肪肝を改善することが示された。」
[3] Richie, J. P., Jr, Nichenametla, S., Neidig, W., Calcagnotto, A., Haley, J. S., Schell, T. D., & Muscat, J. E. (2015). Randomized controlled trial of oral glutathione supplementation on body stores of glutathione. European journal of nutrition, 54(2), 251–263. https://doi.org/10.1007/s00394-014-0706-z
[4] Honda, Y., Kessoku, T., Sumida, Y., Kobayashi, T., Kato, T., Ogawa, Y., Tomeno, W., Imajo, K., Fujita, K., Yoneda, M., Kataoka, K., Taguri, M., Yamanaka, T., Seko, Y., Tanaka, S., Saito, S., Ono, M., Oeda, S., Eguchi, Y., Aoi, W., … Nakajima, A. (2017). Efficacy of glutathione for the treatment of nonalcoholic fatty liver disease: an open-label, single-arm, multicenter, pilot study. BMC gastroenterology, 17(1), 96. https://doi.org/10.1186/s12876-017-0652-3
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グルタチオン、副作用が現れることもある?
グルタチオンは、体内で自然に合成される抗酸化物質の一つで、もともと私たちの体に存在する成分です。さらに、食品原料の安全性を最も厳しく評価するとされる米国食品医薬品局(FDA)でも、グルタチオンは「人が摂取しても一般的に安全である」としてGRAS(一般に安全と認められる物質)ランクを付与しています[4]。
もちろん、健康によいとされるどの成分も、短期間に高用量を投与すると予期しない副作用が現れることがあります。高用量のグルタチオンを静脈注射すると、アレルギーをはじめとする副作用が生じる可能性があります。しかし、これまで学界に報告されたほとんどのグルタチオンの人体応用試験を調べると、成人を基準に250mgから1,000mg程度のグルタチオンを毎日摂取しても、深刻な副作用は観察されなかったことが確認されています。
これに関連して、2017年に Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology に発表されたレビュー論文では、グルタチオンは概ね無毒性であり、アミノ酸過剰摂取による毒性を解毒する性質があると報告されています[5]。
「グルタチオンは食事補助剤として使用しても安全であり…ほとんどの臨床試験において深刻な副作用は観察されなかった。逆に、アミノ酸過剰摂取による毒性を解毒する作用を持つ可能性がある。」
[4] U.S. Food and Drug Administration (.Gov), GRAS Notices <Glutathione>
[5[ Weschawalit, S., Thongthip, S., Phutrakool, P., & Asawanonda, P. (2017). Glutathione and its antiaging and antimelanogenic effects. Clinical, cosmetic and investigational dermatology, 10, 147–153. https://doi.org/10.2147/CCID.S128339
今日は、さまざまな論文を通して、これまで私が最も多くいただいたグルタチオンに関する質問をすべてまとめてみました。本文で説明したように、学界では幅広い検討の結果、比較的新しい摂取方法である口腔内溶解フィルム型グルタチオンが、従来の経口摂取における低い吸収率を大きく改善したと評価しています。さらに、これまで報告されている検証済みの人体応用試験では、グルタチオンを経口摂取しても十分に健康へのメリットがあり、深刻な副作用もほとんどないとされているため、その効果や副作用についてもあまり心配する必要はありません。
最後に、グルタチオンを選ぶ際に考慮すると良い二つのポイントをお伝えして締めくくりたいと思います。まず、グルタチオンは純度が高いほど体内への吸収量が多くなります。通常、L-グルタチオン酵母抽出物という原料形態で製品に使用されるため、純度を確認する際には実際のL-グルタチオンの含有量がどれくらいかを確認することをおすすめします。最近では、リポソーム技術を用いたグルタチオンも多く見られます。リポソームとは、私たちの細胞膜と構造が似た薬物送達体で、成分の損失を最小限に抑えて吸収率を高めるため、この技術を用いたグルタチオンを選んでみるのも悪くないでしょう。
これからも気になる成分があれば、いつでもコメントでお知らせください。私、Jinnyが論文をもとに丁寧にお読みします。
心も体も健康な一日をお過ごしください。以上、Jinnyでした。